チャレンジド

「写心家」田名部有希

 七月中旬、神戸三宮にある神戸三宮のカフェ&バー&ギャラリー「en+(エンタス)」で、ある写真展が開催された。
写したカメラマンはカメラを持って約4年。そして何と彼女は無音の世界の住人。
 だがそんなカメラ歴も浅い彼女の写真に惹きつけられ、撮影の依頼をする方が毎日のように殺到している。
 シャッターを切るとき補聴器を外して押す。そうする事で彼女は「無音の中で、表情やしぐさに集中する」のだそうだ。今回は感音性難聴という障がいを持ちながらも、撮った写真からは鼓動までが聞こえそうな「写家」田名部有希さんにお話を伺った。
(取材:熊沢)


田名部さん、今回の写真展についてお伺いしたいのですが、どうして障がいをお持ちの方にスポットを当てたのですか?

田名部:実は最初のきっかけは友人であるエンタスのオーナーから「僕には多くの障がい者友達がいるんだけど、どうしても可哀想というイメージを周りの人はもっているから、そうじゃない、と分るあたたかい写真を撮って?」と言われたことからなんです。正直、戸惑いもありましたが健常者の方から「かわいそう」と壁をつくられたりするのを、少しでも払拭できるような一枚を撮れたら、と思って挑戦させてもらいました。

被写体になってくださった方々とは撮影中もいろいろお話しされていらっしゃると思いますが、みなさんからどのようなお話を伺ったんですか?
田名部:写真の左手首から先がない女性、ちあきさんからは「左手の指が生まれつき無くて、毎日の生活はちょっと不便。でも赤ちゃんのように小さな手のひらは、魔法の手のように器用に使えます。
 ほんの少し不便な毎日を、工夫をしながら過ごしているコト以外は、健常者の方たちと何ら変わらない日常が伝わればいいな♪ と思いました。」と聞きました。

 そして片足が義足のダンサーの大前光市さんからは「ダンスに命をかけていた二十四歳の雨の夜、天王寺動物園の脇で暴走運転の車にひかれて片足を失いました。プロになるのを断念しようと思いました。絶望のふちで„これからどうしようか?〝と考える日々も過ごしましたが、やっぱり踊ることは楽しい!と„片足でもダンサーになるぞ〝と決意してダンサーに復帰しました。今では義足と車椅子を使って踊ってます。カカシのダンサーと自分で命名し、たくさんの学校にも招待され講演活動もしてきました。輝く人生は自分で決めて進んでいくしかないと思います。」というようなお話も。

 あと最後にもう一枚のみんなでジャンプしている写真ですが、このジャンプしている人たちって何の障がいをお持ちかわかります?
 実は私と同じ聴覚障がい者なんです。耳が聞こえていても一斉にそろう事が難しい構図なんです。通常声を掛け合って合図しても一斉ジャンプは難しいんですが、今回は手を繋いで振り上げるのを合図に飛んでもらいました。見て、どの人が障がい者で、誰が健常者ってわかりますか?わからないですよね!でも相手を見ただけではわからないのに、可哀想って思われちゃうんですよ。障がいを持っているからとか何か違うから、ではなく話して・理解して・一人一人の心の音色を感じて、よりよい社会にみんなで作れたらって思います。

 

最後に伝えたい事、みんなに知ってほしい事をお願いします。
田名部:障がいを持って生きる事は、不便な事も多いです。健常者と同じように家庭も持つし、悩むし、笑う。みなさん障がいを他人のせいにしていない被写体です。親のせいにしていない、社会のせいにしていない、障がいを受け入れて前を見ている人たちです。こうだろう、と決めつける前に私たちの"ひたむきさ","あかるさ"も知っていただけたら嬉しいです。


彼女の撮る写真からはたくさんの音が聞こえます。時が止まらない写真、鼓動を感じる写真。だから魅了されるのだと思います。心を伝える写真家、田名部有希さんの活躍を今後もたのしみに追いかけたいと思います。

田名部 有希(たなべ ゆき)
6歳のころに感音性難聴と診断され、補聴器を使えば音はかすかに聞こえる。話の内容を聞き取ることはできないため、会話の際は相手の口元の動きを見て理解する。現在普通のOLとして働きながら、要望があればカメラを持って出動するスタイル。

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